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216ノンフィクション一般ジャーナリズムの分野で有名なピューリッツァー賞には、「歴史」と「伝記・自伝」のカテゴリーに属さないノンフィクションを対象にした「一般ノンフィクション」のカテゴリーがあるが、本書....

216ノンフィクション一般ジャーナリズムの分野で有名なピューリッツァー賞には、「歴史」と「伝記・自伝」のカテゴリーに属さないノンフィクションを対象にした「一般ノンフィクション」のカテゴリーがあるが、本書でも、特に他のサブジャンルに属さない一般的なものを「ノンフィクション一般」としてご紹介する。ヨーロッパ人はアメリカ、オーストラリア、アフリカ大陸で先住民を征服して文明を壊滅させてきたが、その逆はない。それはなぜか。本書は、著者が訪問したニューギニアの住民から受けたこの質問から始まる。これまで、ヨーロッパ人のほうが人種として優れているという偏見に満ちた説も有力だったが、著者は進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など広範な知識を駆使し、結論として「地理的要因」を挙げる。ヨーロッパ大陸は地理的に大規模農業に適しており、ゆえに人口が集中し、専門職ができ、複雑な政治体制ができた。そして貨幣を使った市場経済ができ、侵略や戦争 が生まれ、武器が発達した。それと同時に、病気に対する耐性ができてきた。だが、アフリカやアメリカの狩猟採取社会では、それらが生まれる条件がなかったのだ。強力だったインカ帝国が、少数のスペイン人がもたらした銃、病原菌、鉄により短期間に崩壊したことを説明する個所は知的興奮をもたらしてくれる。また、征服する者とされる者の運命を決めたのは生物学的な優劣ではなく地理的条件だという著者の説は、実際にペルーに行ってみると納得がゆく。読みやすく、理解しやすく、満足感の高いノンフィクション。ピューリッツァー賞受賞作。同著者のCollapse はマヤ文明などかつて栄華を極めた文明が崩壊してゆく原因や共通パターンを探ったもの、The World Until Yesterday は工業化した西洋社会と伝統的社会の違いを描いたもので、どちらもおすすめ。もっと読みたい人には……Guns, Germs, and SteelJared Diamond・ペーパーバック:480 ページ・出版社:W. W. Norton & Company・出版年:1999(初版1997)・難易度:★★★★☆・適正年齢: PG12(中学生以上)・キーワード:歴史/地理学/文化人類学/言語学/進化生物学『銃・病原菌・鉄(上・下)』ジャレド・ダイアモンド(著)、倉骨彰(訳)、草思社文庫