ブックタイトルシャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学 試読

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概要

シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学 試読

しかない」という言い方を、第二言語習得研究ではしています。ちょうどこれは、コンピューターの内部メモリが、さまざまなアプリ(アプリケーションソフト)を同時に起動することで、その大半が消費され、その結果各アプリの動きがスムーズでなくぎこちなくなったり、フリーズしてしまったりする状況と似ています。外国語としての英語の教育に当たっている先生方も、多くの学習者がこのような状況に容易に入ってしまうことを十分に理解する必要があります。ところで、認知資源が大量に消費されて残りが少なくなるのは、何も英語(外国語)を使ってコミュニケーションを行っているときだけではありません。同時に複数のタスク(作業)を人が実行するとき、多くの場合、認知資源があまり残されていないという状況に陥っています。例えば、街を歩きながら、iPhoneなどスマートフォンを使ってメールしている人も多く見かけます。友だちからのメールなど、気楽な内容のメールの処理は歩きながらでも可能でしょう。しかしメールの内容が、仕事に関する緊急の込み入った内容であったり、近親者の事故・病気などの連絡であったりなど、それに集中・没頭してしまう中身の場合はどうでしょう。たちまち、周りに注意する余裕(認知資源)が不足してしまいます。そうすると、前から歩いてくる人に気づかなかったり、信号が赤になって、車が猛スピードで向かってくるのに無視してしまったりという状況が生じてしまいます。こうして他の人と衝突するといった軽いものから、自身の命も奪われかねないような事故に遭遇してしまうのです。実は、上記のような二重課題と認知資源の関係については、従来から認知心理学の重要な研究分野です。どのようなタスクなら、同時進行が可能であるか、この作業とこの作業の組み合わせは同時並行で行うことは無理であるといった研究が行われてきました4)。その結果、ラジオのニュースを聞きながら、本を読む、ある人と言語によるコミュニケーションを行いながら、別の人がしゃべっている内容を理解するといった組み合わせを同時進行で実施するのはほとんど不可能であることがわかりました。ところが、ジョギングをしながら、ラジオの音声を聞いたり、英語学習のCDを聴いたりするなどということは、パーフェクトにできます。上記の読書と組み合わせるのがラジオの音声なら不可能ですが、もし音楽を聞くだけだったり、本でも写真集18 4)第1章1-3も参照。