ブックタイトルシャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学 試読

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概要

シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学 試読

序章コミュニケーションは同時進行がいっぱい!:多重処理とは?をながめたりしながら人の話を聞くのであれば、ほぼ実行可能になります。このようなことは認知心理学の研究成果を待つまでもなく、私たちが日常的に経験して、実感できるものではないでしょうか。本書でも第4章で詳しく解説している、ワーキングメモリの記憶容量をテストする方法にリーディングスパンテスト5)があります。このリーディングスパンテストによって測定されたワーキングメモリ容量は、実は英語などの学習能力と高い関係があり、外国語学習の適性を予測するものであると言われています。すなわち、はじめて聞く単語やフレーズを、意味が理解できるかどうかとは別にそのまま一時的に頭の中に蓄える能力が重要であると考えられているのです。そして、このリーディングスパン・テストでは、英語の短文を音読しながら文末語を記憶していくという能力が試されます。すなわち、記憶保持をしながら、同時進行で、英文の音読をする二重課題です。この二重処理をどれだけうまく効率的にやってのけるかを測定するのがこのテストです。これによって測られたワーキングメモリ容量は、いわば二重処理課題に対する対応力を示しているもので、それが外国語の学習能力を予測するのではないかと言っているのです。事実、日本人英語学習者の英語熟達度を、このリーディングスパン・テストが十分に反映しているという報告も少なくありません6)。最後に、近年高齢者の転倒事故なども増えています。これも単に老化による筋肉の衰えだけが原因ではないようです。特に、「考えながら歩く」「話しながら手を動かす」といったふたつを同時に行なう二重処理能力の低下が原因として指摘されています7)。そのため、転倒防止の対策として、この二重課題処理能力を適切に測定できるシステムが開発されているようです8)。以上のような二重処理など多重処理(multiple processing)においては、それぞれの処理の切り替えをおこなう、中央実行系の仕組みが重要であると考えられます9)。5)第4章4-2を参照。6)例えば、Nakanishi(2007)などを参照。7)http://www.qlife.jp/square/healthcare/story45843.htmlなどを参照。8)http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/141209_1.htmlを参照。9)これについては、本書第4章4-1を参照。19