『風の又三郎』を英語で読む

英訳・解説: ロジャー・パルバース
A5判書籍184ページ
定価1,980円(税込)
2023年7月刊

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内容紹介

●宮沢賢治のオノマトペの世界を原文と英訳で同時に味わう

「どっどど どどうど どどうど どどう」、『風の又三郎』は風のうなりのような言葉で始まります。「堅雪かんこ、凍み雪しんこ」が繰り返される『雪渡り』、「キシキシキシキシキシッ」と叫んで空高く昇る『よだかの星』、最愛の妹トシが「あめゆじゆとてちてけんじや」と賢治に頼む『永訣の朝』。

子どものときに子ども向けにアレンジされた文章で読んだ宮沢賢治はただ面白かったのに、あらためて原文に向き合ってみると、大正時代の岩手の話し言葉へのなじみの無さも相俟って手強さを感じます。ときに読点がほとんど無かったり、ほとんどがひらがなのみだったりする賢治の文体。ロジャー・パルバースの英訳を読むと、主語がはっきりしている英語の特徴から、原文ではよくわからなかった箇所もすんなりと頭に入ってくることが多々あります。

「「わぁい。やんたじゃ。きょう五年生ど六年生だな。」
“No way. It’s the kids in the fifth and sixth grade whose turn it is today!”
「そだら早ぐ行ぐべすさ。」
“We all better beat it then.”
「何して会社で呼ばったべす。」
“Why was he called away by his company?”


原文と英訳を比較しながら読むことで、宮沢賢治の世界をもっと深く味わい、理解することができるでしょう。「光、風、空気、雪」を媒介として生み出された作品の数々は、今から100年前の時点で自然の大切さを強く訴えていました。地球の未来が危ぶまれる今こそ、宮沢賢治はもっと読まれるべき作家と言えるのではないでしょうか。

本書は左ページに英文、右ページに原文と語注を配置し、見開きで突き合わせが容易にできます。さらに、無料でダウンロードできる英文朗読音声を用意しています。『雪渡り』『よだかの星』『永訣の朝』の朗読はロジャー・パルバース本人が担当し、『風の又三郎』はプロのナレーター担当です。



【本書の構成】

『風の又三郎』
The Boy of the Winds
読む前に—浮いた存在? 変わり者? オタク? マニア? 異邦人?

2学期が始まる9月1日の朝、教室にやってきた子どもたちは、不思議な赤毛の少年がいるのに気づいた。転校生の高田三郎だ。不思議な力をもち「又三郎」と呼ばれる少年は……。

本編

『雪渡り』
Snow Crossing
読む前に—狐につままれた人間たち

ある冬の日、四郎とかん子の兄妹は、小狐の紺三郎と知り合って楽しいひとときを過ごした。12歳以上は来場お断りという狐の小学校の幻燈会に誘われて……。

本編

『よだかの星』
The Nighthawk Star
読む前に—ひかりはたもたれ、電燈は失われ

鷹からはいじめられ、星たちからも蔑まれ、周りから常に冷たい扱いを受けるよだか。しかし星になろうと決意したよだかは、ついに死に物狂いで自力で天上を目指す。

本編

『永訣の朝』
The Morning of Last Farewell
読む前に—天上のアイスクリーム

最愛の妹トシとの、この世における最後の別れの時が刻々と迫る。その時を迎えようとする中、賢治は空から降ってくるみぞれをお椀で受け止めようとする。その雪が妹の最後の食べ物になるのだ。深い悲しみと慟哭の果てに何を見るのか。賢治はその覚悟をこの詩に託す。

本編


■本書の原作は『宮沢賢治全集』(ちくま文庫)を底本とし、新仮名遣いに変更するとともに一部の漢字を改めています。韻文である『永訣の朝』は底本のまま旧仮名遣いで掲載しています。


●本書ご購入者は、音声付き電子版を無料で利用できます。
●音声はQRコードを読み取るだけの簡単ストリーミング再生と、パソコンへのmp3音声ダウンロードの2種類です。


ロジャー・パルバース
作家、劇作家、演出家、翻訳家、映画監督、東京工業大学名誉教授。
1944年ニューヨーク生まれ。ハーバード大学大学院卒業。ベトナム戦争への反発からアメリカを離れ、1967年に初来日し、京都産業大学、東京工業大学で教鞭をとる。映画『戦場のメリークリスマス』で大島渚の助監督を務めた。


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